自己破産していても起業で融資が利用できる!再挑戦支援資金の活用法とは?

現在の日本では、一度事業で失敗をしてしまうと、再度、起業をするのが非常に難しい状況となっています。そのため、過去に自己破産や廃業をしたようなケースでは、もう一度事業にチャレンジをしようとしても資金の調達をすることができません。このような方におすすめなのが、日本政策金融公庫の「再チャレンジ支援資金」や信用保証協会の再挑戦支援制度です。この記事では、自己破産等により起業が難しい方に向けて、再チャレンジ支援資金や保証の概要やその使い方についてご説明します。

再挑戦支援資金(再チャレンジ支援資金)とは?

再挑戦支援資金(再チャレンジ支援資金)とは、日本政策金融公庫が行っている融資制度の一つで、廃業歴等があっても再度、起業にチャレンジしたいという方を支援する融資制度です。

しかし、一度、廃業された方を対象とした融資のため、通常の融資に比べると審査のハードルは高くなるといえます。

そのためこの融資を利用する場合には、「いかにやむを得ない理由で廃業したのか?」という廃業の理由や、「廃業の経験をどのような形で、今後の事業に活かしていくのか?」といった、過去の経験や反省を踏まえた計画づくりがポイントとなります。

また、再チャレンジをする分野はできれば経験のないものではなく、以前に行なっていた事業もしくはこれと関連する事業を選択した方が、成功の確率があがりやすいといえるでしょう。

なお、日本政策金融公庫とは別に、一部の自治体では信用保証協会の保証がついた「再挑戦制度」を行なっています。

そのため、条件を満たせる方については、こちらの制度も利用することができます。

 

再挑戦支援資金を申込むには? その条件は?

再挑戦支援資金の概要

日本政策金融公庫の「再挑戦支援資金」の利用条件やその他については、以下のとおりとなっています。

● 利用条件
新たに開業する方または事業開始後おおむね7年以内の方で、次のすべてに該当する方
① 廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること
② 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
③ 廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること
● 融資限度額
7,200万円(うち運転資金4,800万円)
● 資金使途
新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金・運転資金(前事業に係る債務を返済するために必要な資金を含む)
● 返済期間
設備資金20年以内<うち据置期間2年以内>
運転資金15年以内<うち据置期間2年以内>
● 利 率
基準利率。ただし、「女性の方、35歳未満または55歳以上の方」や「中小企業の会計に関する基本要領」等を適用している、または適用する予定の方」などの一定の要件を満たす方については、特別利率が適用されます。
● 担保・保証
原則、必要。

再挑戦支援資金の利用のポイントと注意点

「廃業歴等のある」こととは?

この融資では、過去に廃業歴等があることが条件となっています。

この「廃業」とは、破産・民事再生などの法的整理をした場合だけでなく、自発的な廃業や資金繰りの失敗、負債の返済ができないことによる事業継続の不能の場合などを含みます。

「廃業時の負債が、新たな事業に影響を与えない程度に整理できる見込みがある」について

再挑戦支援資金は、申込みの時点で、負債が完全に返済できていない場合でも利用することができますが、その負債が過大なものでないことが条件となります。

なお、この要件については、日本政策金融公庫の担当者は次のように語っています。

「この制度を利用するにあたって、過去の事業による負債が残っているのは仕方ないが、現時点においてその返済について、債権者と話し合いができており、そしてある程度合理的な金額の返済が行われていて、完済のめどが立っていることが原則となる。」

つまり、負債額が返済可能な程度に少額であって、その返済を続けても新しい事業を問題なく継続できることが必要ということとなります。

したがって、負債の返済額が大きくて、事業を継続しながらでは返済ができないような場合には申込みの対象外となります。

具体的にどの程度であればこの要件に該当するかについては、ケースバイケースとなりますが、たとえば「現在の支払額が数万円程度の方」、「破産宣告後に免責をうけていて、返済義務のない方」などについてはこの要件に該当する可能性が高いといえます。

しかし、それとは異なり、金融機関からのリスケジュールをうけていて、「毎月あたりの支払額は少ないものの、返済しなければならない負債額が大きい方」や「単に負債の支払いが一時的に棚上げされている方」などについては、利用は難しいといえます。

「廃業の理由・事情がやむを得ないもの等である」ことについて

この融資を利用するためには、「廃業の理由や事情が、やむを得ないものであること」が必要となります。

たとえば、「まじめに仕事をしていたが、景気やコロナの影響などにより売上げ不振となった」、「取引先の倒産により資金繰りが悪化した」などがこれに該当します。

しかし、「賭けごとに資金をつぎ込んで経営が続けられなくなった」や「放漫な経営をしていたため倒産した」などの理由による場合には、利用は困難といえます。

また、「無許可営業による摘発」や「犯罪行為により刑務所に収監された」などの理由による場合も、やむを得ない事由には該当しません。

担保・保証人について

再挑戦支援資金は、原則として「無担保・無保証」の融資ではないため、利用にあたってはこれらの用意が必要となることがあります。

しかし、本融資については、「新創業融資制度」や「担保を不要とする融資節度」と併用して利用することが可能です。

そのため、これらの制度の要件を満たすことのできる方については、無担保・無保証で再挑戦支援資金を利用できる可能性があります。
・新創業融資制度 融資上限額3,000万円
・第三者保証人を不要とする融資制度 融資上限額(上限額4,800万円)

事業を開始してから「おおよそ7年以内」について

再挑戦支援資金では、「事業の開始前」または「事業を開始してからおおよそ7年以内」と利用できる期間に制限があります。

そのため、7年を経過してしまったという場合には、この制度を利用できなくなってしまうためご注意ください。

日本政策金融公庫への借入れがあった場合には、難しくなるかも?

破産した時に日本政策金融公庫への借入れがあり、その債務についての免責をうけている場合には、この制度による公庫からの借入れは難しくなる可能性があります。

免責を受けることで、法的な支払い義務はなくなりますが、当事者である公庫側においては、その時の記録は残されており、審査の調査をすれば債務があったことが判明するからです。

そのため、このような場合には、公庫から過去の残債の整理を求められる可能性も考慮する必要があります。

 

再挑戦支援資金を利用しやすい方・しにくい方

このように再挑戦支援資金の利用には、一定の条件があるため、本制度を使いやすい方と使いにくい方に分かれることになります。

再挑戦支援資金を利用しやすいと思われる方

・ 自発的に廃業をしたため債務がない、またはあっても少ない方
・ 破産者で免責決定を受けていて、負債の支払い義務がない方
・ 廃業時の負債について民事再生手続き等により大幅な債務免除を受けている方
・ 当事者間の話し合い等により、債務の免除や大幅な債務免除等を受けた方
・ 廃業時の負債が大きくなく、現在も弁済していて近い将来に完済が見込める方

再挑戦支援資金の利用が難しいと思われる方

・ 廃業後の負債が多額であり、その返済に長期の時間がかかるような場合
・ 金融機関にリスケジュールをしてもらっており、多額の負債が残っている場合
・ 以前の事業の負債について、信用保証協会から代位弁済されている場合
・ 返済ができるほどの利益を出せる事業計画書を提出できない場合
・ 風俗営業などの日本政策金融公庫が融資をすることのできない事業をする場合
・ 無許可での営業や犯罪行為による摘発などの原因により廃業している場合

 

その他の再チャレンジ支援制度

日本政策金融公庫だけでなく、一部の信用保証協会でも再チャレンジ支援を行っています。
ただし、信用保証協会の場合には、公庫のように直接資金の融資をするのではなく、融資についての保証をするという支援の形をとっています。

信用保証協会の行っている再チャレンジ支援としては、以下のようなものがあります。

再挑戦支援保証(岩手県信用保証協会)

● 利用条件
過去に経営状況の悪化により事業を廃止もしくは、会社を解散した経験を有する創業者で、当該事業廃止の日もしくは、会社を解散した日から5年を経過する前に保証の委託を申し込んだ方
● 資金使途
運転資金及び設備資金
● 融資額
2,000万円 さらに創業等関連を合算しての限度は3,500万円
● 利 率
取扱金融機関所定の利率
● 融資期間
運転資金  10年以内 設備資金  10年以内(据置、1年以内)
● 担 保
不要
● 信用保証料率
0.90%

再挑戦支援保証(富山県信用保証協会)

● 利用条件
経営状況の悪化により過去に営んでいた事業を廃止または会社を解散してから5年以内の次の方
① 事業を営んでいない個人で、1か月以内に新たに事業を開始する方
② 事業を営んでいない個人で、2か月以内に新たに会社を設立する方
③ 事業を営んでいない個人で、事業を開始して5年未満の方
④ 事業を営んでいない個人が設立し、設立後5年未満の会社(事業を営んでいない個人が個人事業主として創業し、法人成りした場合を含む)
● 保証限度額
3,500万円(創業関連保証と再挑戦支援保証の合計)
● 保証期間
10年以内
● 資金使途
運転・設備ともに可
● 連帯保証人
原則法人代表者のみ
● 担 保
不要
● 信用保証料率
0.8%

創業おうえん資金 再挑戦(横浜信用保証協会)

● 利用条件
次のすべてを満たし、市内で新たに事業を開始する方(又は新たな事業を開始してから5年未満の方)
① 過去に自らが営んでいた事業をその経営の状況の悪化により廃止した経験を有する方、又は過去に経営の状況の悪化により解散した会社の当該解散の日において当該会社の業務を執行する役員であった方
② 事業の廃止日又は解散日から5年未満の方
● 資金使途
運転資金及び設備資金
● 融資額
3,500万円以内
● 利 率
固定金利又は変動金利のうちから選択できるものとする。
● 融資期間
運転資金10年以内 設備資金10年以内(据置12か月以内を含む)
● 担 保
原則として不要
● 保証料率
0.72%(1/10助成)

まとめ

過去に廃業歴のある方でも、日本政策金融公庫の再挑戦支援資金や再挑戦支援保証の制度を使えば再度、起業するための融資や保証を受けることができます。

しかし再挑戦支援資金では、廃業から7年以内や廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であることなどの要件があるため、これらをクリアーできることが必要となります。

また、再挑戦支援保証についても、すべての信用保証協会でこの制度を用意しているわけではないため、まずは自分の自治体で取り扱いをしているかどうかを確認する必要があります。