公庫創業計画書の「4取引先・取引関係等・5従業員・6お借入の状況」の書き方と絶対外せないポイント
日本政策金融公庫の創業計画の「取引先」においては、「販売先や仕入れ先が確定しているか?」や、「取引条件が計画に反映できているか?」などが審査のポイントとなります。
また、「借入の状況」においても、事業性の借入れなどがあると、評価が下がる可能性が高くなります。
この記事では、これらについての具体的な記載方法や、審査でNGとなりやすい項目について解説します。
販売先・仕入先
販売先や仕入先については、これらがあるかないかで審査に影響を及ぼす可能性があることや、取引条件によって収支計画の内容に違いが生じることなどに注意する必要があります。
販売先や仕入先の有無による審査への影響
事業開始時に具体的な販売先が決まっているような場合には、すぐに売上げが見込める可能性が高いことため、審査においても有利となります。
逆に、これらが決まっていないケースでは、目標の売上げの確保が難しいのでは?という評価となりやすくなります。
創業のケースでは、事業の開始前から販売見込み先や仕入先が決まっていることは、あまりありません。しかし、その場合には0から販売先等を見つけなければならないため、その分だけスタートが遅れることとなります。
通常、宣伝広告などの効果が行きわたり、事業そのものが周知されるようになるまで1~3ヶ月程度の時間がかかります。
この間については、ほぼ売上げがないため、自己資金または融資資金を使いながら営業をすることとなりますが、一般的な運転資金の融資額は3〜4ヶ月程度です。
そのため、この期間を過ぎても十分な売り上げを立てられない場合には、最悪、廃業の危険性もあります。
一方、事業のスタート時にある程度の販売先が確保できているケースでは、このようなリスクが少なく、見込み客からの売上げにより事業を継続しやすいといえます。
この点については、日本政策金融公庫でも十分に理解しており、販売先があるケースについては、審査でも高い評価となります。
そのため、注文や取引の予約などがある場合には、これを計画書に記入するか、その見込み額を収支計画に織り込むようにします。
なお、販売先がないからといって、ウソや取引のない企業を記入するのはNGです。
日本政策金融公庫では審査の際に、ここに記載されている企業が実在するかどうかをホームページや直接連絡などの方法で確認しています。
なのでもし、虚偽や取引がないことがばれた場合には、大きな減点となってしまいます。
また、仕入先についても、基本的には販売先と同じことがいえますが、仕入れ先については比較的、確保しやすいといえます。
たとえば、自分で扱いたいと思う商品がある場合、それを販売している商店を見つけて仕入条件などが合えば、それを仕入先候補として記入することが可能です。
しかし、公庫では仕入れ先についても確認をしているため、こちらについても虚偽の記載などをしないように注意してください。
販売や仕入時の取引条件について
通常、特定の業者と販売や仕入などの取引をする場合には、代金の支払いや回収に関する条件を決めてこれを行います。
具体的には、取引の締切日と代金の支払いまたは回収の期日を決めて行いますが、取引をした時から決済までの期間を「支払いサイト」または「回収サイト」といいます。
実際の事業においては、この支払いと回収の条件がどうなっているかで、資金繰りが楽になるか、厳しくなるかが決まるため、これらは大きな問題といえます。
たとえば、代金の回収条件が「当月末締め、翌月末払い」となっているケースで、仮に3/2に商品の販売をしていれば、その代金が入金されるのは4/末となります。
一方で、自分が仕入れた商品の支払い条件が同じ「当月末締め、翌月末払い」の場合、その商品を2/10に仕入れていたならば、商品代金の支払いをするのは3/末となります。
けれど、この時点では販売した商品の代金はまだ、入金されていないため、支払いは手持ちの資金で立て替えなければなりません。
これに対して、飲食店のような現金払いの営業のケースでは、販売した3/2の時点で売上げが入金されるため、資金繰りに困ることはありません。
このように取引条件がどうなっているかは、収支の状況にも影響を及ぼすため、この点をきちんと理解して収支計画を作らないと、面談時に担当者から「この計画では利益は出ても、現金が足りなくなりますね」などという指摘を受ける可能性があります。
販売先や仕入先の記入の仕方
特定の取引先が決まっている場合には、その氏名・住所、取引のシェア、かけ取引の割合の他、代金の回収や支払いの条件についてもキチンと記載します。
創業計画に記入する数量についてはある程度の見込みでも構いませんが、「なぜ、その売上げが可能と思えるのか?」という根拠については説明できるようにしておくことが重要です。
通常、取引をはじめて数回程度までは、現金払いとなることがほとんどですが、掛での取引ができるようになっている場合にはその条件を記載します。
計画書への記入にあたっては、下記のように具体的にどんなものを仕入れるのかを明記しておくとさらにわかりやすくなります。
なお、取引先等の記入にあたり記入スペースが不足する場合には、計画書のフォーマットの空白に「別紙のとおり」と記入して、計画書用紙と別紙をあわせて提出することをおすすめします。
公庫では、創業計画書のフォーマットをA4一枚の用紙としてまとめていますが、別にこの用紙を必ず使わなくてはならないというわけではありませんし、記入する文字数については〇文字以内が望ましいという制約もないため、必要であれば長くなってもまったく問題ありません。
<販売先>
・一般顧客 (シェア:80% 掛取引:なし 回収条件:現金、カード)
・〇〇企画 株式会社 東京都新宿区○○1-1-1
(シェア:約20% 掛取引:あり 回収条件:当月末締め、翌月末払い)
<仕入先>
・株式会社 ○○○ 東京都練馬区○○1-1-1
(シェア:約40% 掛取引:あり 回収条件:当月末締め、翌月末払い)
※ 肉類を中心に、各種の輸入食材、調味料を扱う食材店です。
・有限会社 ○○水産 千葉県浦安市○○1-1-1
(シェア:約25% 掛取引:あり 回収条件:当月末締め、翌月末払い)
※ 鮮魚の卸・小売店です。
・株式会社 ○○○ 茨城県稲敷郡○○町1-1-1
(シェア:約30% 掛取引:あり 回収条件:当月末締め、翌月末払い)
※ ワインや日本酒などを扱う酒販店です。
・その他(仕入れシェア約5%)
【 外注先 】
事業において、定期的に外注先を利用する場合には、上記と同じ振りあいで記入します。
【人件費の支払い】
給与やボーナスなどの定期的な人件費の支払いがある場合には、その支払い条件についても「毎月末日締、翌月末日払い」のように記入します。
従業員数
法人の場合は常勤役員の数を記入しますが、会社の登記事項証明書の内容と相違がないように記入してください。
また、従業員数は3ヶ月以上継続雇用を予定している方について、家族従業員とパート社員の人数をそれぞれ記入します。
なお、新創業融資制度においては、雇用拡大の意味から、従業員等を雇用することが重視されています。実際、以前の融資の申込条件には「従業員を雇用すること」が明記されていました。
現在、この条件はありませんが、融資審査においては従業員を雇用することは現在でもプラスの要因となると思われます。
また、従業等を雇用した場合には、それらの給与を経費として計上できるため、その分だけ融資申込額を増やすのに役立ちます。
この要件は見込みでかまわないため、実際に従業員を雇用しない場合でも、以上の点から計画では従業員を雇うこととしておくことをおすすめします。
なお、複数のパートなどをシフト制により雇用するときには、シフト表などを添付すると、さらに詳細な内容を伝えることができます。
借入れの状況
融資申込時にすでに借入れやローンなどがある場合には、記入例のようにその内訳を記載します。
なお、この部分の借入れについては、個人的な車や買い物のローンなどはよほど高額でない限りあまり融資に影響しないものとされています。
しかし、事業性の借入れやローン、とくに、ノンバンクやビジネスローンからの借入れについては厳しくみられる可能性が高いといえます。
また、代表者の個人情報に問題がある場合も融資は難しくなるため、個人情報上の問題がある方については、問題が解消されるまで申込みを控えることも考えた方がよいでしょう。
まとめ
「取引先や借入の状況」欄は、記入が簡単そうに見える箇所ですが、販売先の有無などが審査に影響を及ぼす可能性があるため注意してください。
また、従業員等の雇用については、できれば無理のない範囲でパートの雇用などを計画に入れておくと、申込額を増やしやすくなります。
なお、借入れについては、すでに多額の事業性ローンがある場合や個人情報に問題がある場合には、融資か厳しくなります。
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