税理士・行政書士・融資コンサルの創業融資の成功報酬の相場

最近の士業やコンサルでは、創業融資やその他の業務について、成果に対する成功報酬制を導入するところが増えています。

これは一見すると、成功した場合にだけ報酬を支払えばよいのでリスクがないように思えますが、ケースによっては割高となることもあります。

また、融資の成功報酬の料率は法律により制限されていますが、中にはこれを無視したケースも見受けられます。

この記事では成功報酬の基本的な仕組みや、出資法との関係、成功報酬契約を結ぶ際の注意点について解説いたします。

成功報酬について

士業やコンサルなどで取り入れられることが多い「成功報酬」にはいくつかのパターンがあり、それぞれでかかる費用やリスクなどが異なります。

成功報酬とは?その種類やメリット・デメリットは?

「成功報酬」とは、何らかの業務やサービスを依頼し、それが成功した場合に報酬をもらうといった形の契約となります。

ただし、成功報酬の形は一つではなく、以下のような種類があります。

① 完全成功報酬

「完全成功報酬」とは、着手金や手続き費用といった一切の費用を依頼者からとらず、対象の業務が成功した場合のみ報酬を受け取る形式の契約となります。

通常、成功報酬といった場合には、この形式を指します。

報酬の支払いが成果のみを対象としているため利用者側に仕組みがわかりやすいとともに、報酬の支払いについても納得が得やすいといえます。

しかし、業務の成功の定義があいまいな場合や、成功報酬の算定のもととなる融資の額があいまいな場合(契約額か?振込額か?)には、トラブルとなる可能性があります。

 

なお中には、一定額のデポジット(保証金)を先にあずかり、融資が成功したときには成功報酬からその額を差し引く、失敗の場合には返金するという形をとっているケースもあります。

② 着手金+成功報酬

これは、成功報酬とは別に一定の着手金を報酬として受け取る形式の契約となります。

事業計画書の作成費については着手金で支払うというケースも少なくありません。

この形式では着手金がかかる分、成功報酬額が安めになっていることも多く、そのため融資額の多寡や成功報酬率の設定によっては、完全成功報酬の場合よりも総額で安くなることもあります。

しかし、報酬が着手金と成功報酬からなるため、総額でいくらの金額となるのかがわかりにくいという特徴があります。

 

③ 顧問契約等の利用が条件となるパターン

成功報酬制の中には、まとまった金額としての報酬はとらない代わりに、一定期間の顧問契約やサービスの利用が条件になるというタイプや、顧問契約と成功報酬がセットになっているケースなどもあります

これらの契約のメリットとしては、「顧問契約をすれば成功報酬額の支払いの必要がなくなる」、「その後の資金繰りなどについて引き続きサポートを受けられる」などがあります。

しかし、一方で、顧問契約の料金自体が高く設定されている場合や、長期間にわたってサービス利用をしなければならない、サービスの内容に不満があってもすぐに解約できないといったことでトラブルになることがあります。

成功報酬型と固定料金型のどちらを選んだ方がよいか?

融資のサポートを依頼する場合、報酬の決め方は大きく分けて「成功報酬型」と「固定料金型」の2種類となります

このうちどちらを選べばよいか迷うという場合には、次のポイントを参考に判断すると失敗が少なくなります。

〇 成功報酬型を選んだ方がよいケース

「融資の申込みがはじめて」という方や、「事業計画書の作成から面談対応までフルサポートしてもらいたい」という方については、比較的、成功報酬型がおすすめです。

 

成功報酬型の場合には、コンサル契約以降に発生する事業計画書の作成や、その他の必要書類の取得、金融機関との面談対応といった融資の申込みに必要な一連の手続きを、すべて一括して行っているのが普通です。

したがって、はじめての融資で何をすればよいのかわからないという場合や、まとめてサポートを受けたいという方に向いているといえます。

〇 固定料金型を選んだ方がよいケース

「予算が限られていて成功報酬が支払えない」、「事業計画書の添削などの部分的な作業を頼みたい」というような場合には、固定料金型が向いているといえます。

 

事業計画書の作成をある程度自分でできるという方については、その内容を添削してもらうだけで融資が受けられる可能性が高いといえます。

そのため高額となりやすい成功報酬制よりも、個別の部分についてのみサポートする固定報酬制の方が利用しやすいといえます。

融資のサポートは誰に頼むべきか?

税金の申告なら「税理士」、許認可は「行政書士」のように、通常の士業には独占業務と呼ばれるその士業でしかできない業務があります。

しかし、融資のサポートについてはこれを独占業務として扱う専門家は存在しないため、士業だけでなく、民間のコンサル会社でもこれを取り扱える状況となっています。

とはいえ、民間のコンサルの中には、まったく税務や法律などの知識を持たずに制度の紹介程度しかしない、いわゆるブローカー的な存在も多く存在します。

そのため、次の点からも融資のサポートは国家資格を持った士業に依頼するのが安全といえます。

 

<民間コンサルに依頼する場合のリスク>

  • 民間のコンサルの場合、十分な融資に関する知識がどれだけあるか不明の場合が多い。しかし、士業であれば資格によりその専門性や知識がある程度以上、担保できている。
  • 契約の内容などに関してトラブルが生じたときには、民間のコンサルではそのまま放置されてしまうことも多いが、士業の場合には所属する会や団体(税理士会や行政書士会など)を通じた相談や救済が期待できる。
  • 民間コンサルの中には遵法意識に乏しいところも少なくないため、個人情報の漏洩や出資法違反の危険性が高まる。これに対して士業の場合には、法令で守秘義務が課されているため情報漏洩の可能性が少ない。

成功報酬額の決め方について

成功報酬額の決め方については、以下のような方法があります。

① 固定した料率にもとづいて計算する方式

これは成功報酬の率を「3%」や「5%」などのように、あらかじめ決められた料率にもとづいて計算する方法です。

たとえば、成功報酬の率が5%で、融資に成功した額が500万円だった場合の報酬額は、5,000,000円×5%=250,000円となります。

② 成功報酬額のレンジにより成功報酬率が変わる方式

成功報酬の決め方の中には「融資額のレンジにより成功報酬率が変動する」方式を採用しているところもあります。

このような決め方を「レーマン方式」といい、コンサル系の会社に多く見られます。

たとえば、「融資額が500万円以下の場合は5%、500〜1,000万円の場合は4%」などするのが代表的な例となります。

そのため、比較的、料金設定がわかりやすい反面、実際の融資額が確定しないと最終的な報酬が決まらないといったデメリットがあります。

③ 固定額方式

あまり数は多くありませんが、融資の額にかかわらず、報酬額がはじめから固定額で決められているケースもあります。

士業の報酬額の決め方の根拠について

税理士や行政書士などといった士業の報酬は、以前は各業務の種別ごとに決められており、それ以上高くするも、逆に低くすることもできませんでした。

しかし、この点につき公正取引委員会から「自由競争を阻害する」といった勧告が出されたことがきっかけとなって、2000年代に入ってから各士業の報酬は自由化されました。

自由化以前の報酬については、士業ごとに「報酬額表」というものが決められており、その中の区分にもとづいて報酬の算定が行われたため成功報酬という概念はありませんでした。

しかし、報酬額の自由化に伴って成功報酬制が徐々に導入されるに至っています。

なお、融資のサポート業務は、契約書の作成のような作業あたりの報酬が業務の本質ではなく、「融資の成功にコミットする」ということが条件となるため、比較的、士業の業務の中ては成功報酬制になじむものといえます。

 

融資以外に成功報酬が適用される業務

融資サポート以外にも、各士業やコンサルでは、次のような業務につき成功報酬制が採用されているケースがあります。

<税理士>

相続税の計算および申告業務、補助金や助成金の申請

<行政書士>

相続人調査や財産目録の作成などの一式業務、産廃許可取得に関する総合的なコンサル、補助金や助成金の申請

<コンサル>

M&A、事業承継、営業譲渡など

各専門家の業務と成功報酬の相場

成功報酬については士業、コンサルを問わず各人がこれを独自に決めているため、これといって定まった報酬額や料率といったものはありません。

しかし、次のような相場が一般的な目安といえます。

士業の相場

税理士や行政書士といった士業が融資コンサルで成功報酬をもらう場合の相場としては「2~5%」が平均的といえます。

ただし、料率が1~2%と極端に低い場合には、「顧問契約などが条件となっている」、「経験の少ない士業が実績をつけるためにしている」などの可能性があるため、十分に契約の条件や実力を確認する必要があります。

また、レーマン方式を採用している場合には、ほんのわずかな金額の差でも高い料率のレンジとなってしまうことがあるため、注意が必要です。

融資コンサルの相場

融資コンサルについても、一般的な成功報酬の相場は「2~5%」となっています。

しかし、中にはこれを大きく超えるケースや、後になってから調査費などの名目で追加料金を請求するところもあるようです。

したがって、契約をする際には「法律に違反した内容となっていないか?」や、「成功時の条件はどうなっているか?」について十分に確認しましょう。

成功報酬と出資法との関係

融資のコンサルと出資法には、密接な関係があります。

これに違反した場合には罰金だけでなく、実刑も適用される重い罪となります。

出資法とは?

「出資法」とは、正式名称を「出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律」といい、主に出資金の受け入れや貸金業者に対する規制を定めたものです。

しかし、第4条で「金銭貸借等の媒介手数料の制限」を定めていることから、これが融資コンサルの請求できる成功報酬の上限を定めたものとなっています。

 

<出資法第4条1項>

「金銭の貸借の媒介を行う者は、その媒介に係る貸借の金額の百分の五に相当する金額(当該貸借の期間が一年未満であるものについては、当該貸借の金額に、その期間の日数に応じ、年五パーセントの割合を乗じて計算した金額)を超える手数料の契約をし、又はこれを超える手数料を受領してはならない。

ここでは、金銭の貸借の媒介(つまりは、融資のコンサル)を行うものは、その金額の5%を超える手数料を受け取ってはいけないということが定められています。

また、同条2項では、保証の場合の保証料についても5%を超えて手数料を受け取ってはならないとし、保証料を対象としたコンサルについても同じ規制をしています。

この規定に違反した場合には、契約そのものが無効となる可能性があるだけでなく、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」に処せられます。

(出資法第8条3項)

出資法の適用される範囲

出資法では、第4条3項において媒介手数料の制限が及ぶ範囲についても規定しています。

<出資法第4条3項>

金銭の貸借又はその保証の媒介を行う者がその媒介に関し受ける金銭は、礼金、調査料その他いかなる名義をもつてするかを問わず、手数料とみなして前二項の規定を適用する。

これによれば5%以上の手数料を取ってはならないというルールは成功報酬だけでなく、その契約に関連する以下の費用についても及ぶものとされます。

・ 礼金

  • 契約書の作成費
  • 調査料
  • 事務手数料
  • 出張費など

したがって、融資コンサルの成功報酬については、これらの名目の金額を加えた総額で5%を超えていないかどうかを確認する必要があります。

なお、この法律が適用されるのは、今のところ「金銭の貸借の媒介」に関する契約のみとされています。

そのため、補助金や助成金によって支給される給付金については、金銭の貸借の媒介にあたらないため、この法律の適用がないものとされています。

成功報酬に関する注意点

融資コンサルを成功報酬で依頼する場合には、次の点についても注意する必要があります。

成功の見込みが低い場合には、「依頼を受けてもらえない」、「業務に真剣に取り組んでもらえない」ということがある。

完全成功報酬で融資サポートをしている士業やコンサルでは、ヒアリングの時点で融資の可能性が低いことがわかったときに、「依頼を受けない」といった対応をするところがあります。

 

また、成功の見込みが低い場合には、依頼を受けてもあまり真面目に業務に取り組まないといったケースもあるため、その士業等の取り組み姿勢を確認して依頼するようにしましょう。

税込みか税抜きかを確認しておく。

成功報酬は税込みか税抜きかによって10%の違いが出るため、報酬額が多額な場合にはその差も大きなものとなります。

 

ホームページなどには単に成功報酬時の料率しか記載されていないことも多く、「税込額だと思っていたら税抜きだった」ということもあるため、トラブルになる前に契約のときに確認しておく必要があります。

事業計画書のひな形を使っているところには注意!

創業融資のサポートを行っている士業やコンサルの中には、過去に使った事業計画書を使いまわしているケースもあるため注意が必要です。

事業計画書は、同じ金融機関、同じ申込額、同じ制度を使う場合でも、申込人の属性や過去の経緯、立地などによりまったく別のものとなります。

そのため、金額や制度が同じでも、過去の計画を書き直したものを使ったのでは、融資の成功率は大きく低下してしまいます。

 

このようなケースは、極端に低い費用や成功報酬で集客をしているところに多く見られるため、「事業計画書の使いまわしをしていないか?」、「自分だけの事業計画書を作成してもらえるか?」について確認しておきましょう。

報酬や費用の総額で5%を超えていないか?

融資のサポートの報酬には出資法が適用されるため、成功報酬だけでなく、着手金や事務手数料などを含めた総額で5%を超えて請求することができません。

 

とくに、成功報酬の代わりに顧問契約が条件となっている場合には、顧問契約の費用そのものが出資法における金銭の媒介に対する報酬とみなされる可能性があります。

まとめ

成功報酬は、仕事の成果に対して報酬を支払うシステムのため、依頼者の安心感につながるとともに、業務の内容によっては得になることも少なくありません。

しかし、成功報酬制には完全成功報酬の他、着手金が別途となっている場合もあります。

また、中には、一定期間の顧問契約が条件となっているともあるため、事前によく「成功報酬の中身」や「なにか別の条件がないか?」を確認しましょう。

また、着手金が必要となる場合には、総額で5%を超えていないかについても注意する必要があります。