税理士が教えたくない!法人成りのメリット・デメリット

税理士が教えたくない!法人成りのメリット・デメリット

個人事業をされている方が、次に考えるステップが「法人化」だと思います。

しかし、法人化がすべてのケースでメリットになるとは限らず、場合によっては法人化をしない方がよいということもあります。

この記事では、法人化した場合のメリット・デメリットの比較、法人化にかかる費用や融資の際のポイントについて解説いたします。

法人成りをした場合のメリット

個人事業から法人成りをした場合には、次のようなメリットが考えられます。

社会的な信用が高く、取引先の拡大につながる

法人化することにより、社会的な信用力が増します。

例えば一部の業者では個人事業主との取引を制限していることがありますが、法人ではこのような制約がないため、取引先の拡大をすることにもつながります。

 

また、社員の採用などにおいても、法人の方が人材を集めやすく、Webサイトなどでも発信する情報の信用力が高くなりやすくなります。

税金が安くなりやすくなる

法人については法人税、個人では所得税とそれぞれかかる税金の種類が異なりますが、税金がかかる仕組みの違いから、法人の方が節税になりやすくなります。

 

一般的には、所得が800万円〜900万円を超えたところから法人税との大幅な税率の差が生じるため、所得がこの額を超える場合には法人の方が有利といえます。

経費にできる範囲が広い

法人については、

・「家族役員に給与を支払える」

  • 「社宅家賃を補助できる」
  • 「役員に退職金を支給できる」

など、個人事業では認められないものでも経費とすることができるようになります。

また、法人が加入する保険料についても、一定の要件を満たすものについては全額を経費とすることが可能です。

許認可の承継がしやすい

建設業や宅建業など許認可が必要となる事業をしている企業で代表者の交代や相続があった場合、個人事業では原則、許認可等の取り直しが必要となってしまいます。

そのため、このようなケースでは免許番号を更新することができず、対外的な信用を失う原因となりかねません。

しかし、法人の場合は、その旨の手続きをすれば比較的簡単に許認可の承継をすることができるため、スムーズに許認可を引き継ぐことができます。

10年間赤字の繰越欠損が使える

企業が決算で赤字を出した場合、個人事業ではその損失を3年間繰り越すことができますが、これに対して、法人の場合は10年間繰り越しをすることができます。

(ただし、資本金1億円以下の企業に限る)

繰り越された損失は、この期間内に利益が出た場合には、これと相殺することができるため、大幅な節税となります。

その他の法人成りのメリット

その他の法人成りのメリットとしては、「(法人に)相続税がかからない」(ただし、相続された会社の株式には、相続税がかかります)、「代表者と個人の責任を切り離すことができる」などがあります。

法人成りをした場合のデメリット

一方、法人成りをした場合には、次のようなデメリットや負担が生じます。

法人の設立に一定の費用がかかる

法人成りをする場合、法人の設立手続きに一定の費用が必要となります。

なお、かかる費用は法人の種類により異なります。

株式会社合同会社
登録免許税15万円〜6万円〜
定款認証代5万円なし
印紙税 ※いずれも電子定款の場合は不要4万円4万円

赤字でも税金がかかる

個人事業の場合は、所得の額が一定の額以下の場合には、住民税が免除となります。

しかし、法人では、赤字の場合でも7万円※の法人住民税(均等割分)を支払う必要があります。

 

※ 東京都の場合。

かかる金額は都道府県により異なります。

社会保険への加入が強制される。保険や年金の会社負担が大きくなる。

法人の場合は、社長が一人しかいない場合であっても社会保険への加入が義務となります。

また、従業員がいる場合には、その保険料や年金の半額以上(労災保険については全額)を負担しなければなりません。

記帳や決算手続きが複雑になる

法人の場合には、個人事業よりも勘定科目が多くなり、記帳や決算の手続きにおいて専門的な知識も必要となるため、その分処理が難しくなります。

 

事業内容が定款の目的内に限定される

法人の事業は、原則として、定款の「事業の目的」の中で定められたものしか行うことができません。

この点は、制限がなく、いつでも自由に好きな営業をすることができる個人事業との違いとなります。

定款の中に付帯事業の項目を入れてある場合には、本業に近いものであればこれにより行うことができますが、まったく違う業種や許認可が必要な業種を行う場合には、それが定款に明記されている必要があります。

 

法人と個人ではどちらが融資を受けやすいのか?

「法人と個人ではどちらが融資を受けやすいのか?」については、「どちらであっても、融資の審査における有利不利はない」といえます。

最低資本金の制度があったときには、法人の方が資力が大きく有利とされていたこともありますが、資本金の制限がなくなった現在では、この点についての差はなくなっています。

また、その他の部分についても、事業の規模がさほど変わらないのであれば、やはり融資に与える影響の差はありません。

ただし、一部のビジネスローンなどには法人しか利用できないものもあるため、このようなケースでは個人事業が不利といえます。

個人事業と法人では、どちらから始めるべきか?

「はじめは個人事業で開業するけれど、近いうちに法人にしたい」とお考えの場合には、はじめから法人として開業することをおすすめします。

 

なぜなら、

  • 個人事業から法人成りをするときには、一度決算をし、資産や負債を引き継ぐ手続きをしなければならない。
  • それまでに行ってきた個人事業の実績のすべてを評価してもらえないことがある。

といったリスクがあるためです。

とくに、融資の審査においては、個人事業での経歴や業績がそのまま認められないケースがあります。

そのため、経歴を長く評価されたいという場合には、はじめから法人として開業する方が有利となります。

日本政策金融公庫の融資を受けるなら法人化がおすすめ

以上、法人化をする場合のメリットとデメリットについてご説明してきましたが、これから日本政策金融公庫で融資を受ける予定のある創業者の方には、法人化を強くおすすめします。

 

なぜなら、日本政策金融公庫の新創業融資制度(融資限度額3,000万円)を法人で利用した場合には、「代表者が連帯保証人にならなくともよい」という、特別な無担保無保証制度が利用できるからです。

ただし、この新創業融資制度を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 開業前または開業後2期を過ぎるまでの方が対象
  • 創業にかかる経費の1/10以上の自己資金が必要
  • 創業計画書を作成、提出する必要がある

基本的に、以上の要件を満たす法人であれば、代表者保証のない無担保無保証でこの融資制度を利用することができます。

このような代表者の保証が必要ない創業者向けの融資制度としては、これがほぼ唯一のものとなります。

この制度であれば、個人的な保証の心配をする必要がなく、また、万が一、事業継続ができなくなった場合でも、短期間でリスタートすることが可能となります。

このように代表者の連帯保証なしで借り入れができるというのは、これだけでも法人化をするべきといえるほどの大きなメリットといえます。

まとめ

以上のように法人化には、メリットだけでなく、デメリットもあるため、その方の状況によって法人化するべきかどうかの答えは異なります。

そのため、必要なのはこれらのポイントを踏まえたうえで「自分の事業にあっているのは、どちらなのか?」という視点となります。

また、創業者については融資を受けるかどうかということも、大きな判断の材料といえます。